t 検定の原理 #2 - 対応のある t 検定

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2018/06/03 更新

  1. 概要: 対応のある t 検定とは – どんな場合に使うのか
  2. 対応のある t 検定の原理

t 検定を理解するために

以下の順番に読んでみて下さい。

  1. 仮説検定
  2. z 検定
  3. t 検定の原理 #1: 母平均の検定
  4. t 検定の原理 #2: 対応のある t 検定: このページ
  5. t 検定の原理 #3: 正規分布、等分散の場合
  6. Welch の t 検定: 等分散と言えない場合
  7. Mann-Whiteney の U 検定: ノンパラ
  8. t 分布
  9. 実践 1: Excel での t 検定

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概要: 対応のある t 検定とは

対応のある t 検定は、2 つのデータセットに対応がある場合に用いる。他の 2 つよりも検出力が高くなる (有意な差を見出しやすくなる) ため、いわゆる「有意差がほしい」ときにも、この検定を正しく使えることは重要である。

  • 10 人が 50 m 走のタイムを測定した (データセットA)。その人たちが 1 週間のトレーニングを行い、 再び 50 m 走のタイムを計った (データセット B)。A と B のデータは同じ 10 人から得られているので対応がある。
  • たとえば、10人に含まれる「鈴木さんの A のタイム」は、「鈴木さんの B のタイム」と対応している。トレーニングの効果を知りたいなら、 他の人の B のタイムではなく、鈴木さん自身の B のタイムと比較するべきである。

このページのポイントは、対応のある t 検定は、母平均がある値に等しいかどうかの t 検定と本質的に同じということである。


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対応のある t 検定の原理

この項目は、「t 検定を理解するために」で 仮説検定 からの一連の流れを読んでいるという前提で説明しています。文献 1 の例題 4 を参考にしています。


例題 4

ある地区でランダムに観測点を 16 箇所 (A - P) 選び、積雪量を測定した。2 行目は昨年 1 月のデータ (cm)、3 行目は今年 1 月のデータである。

A;   B;   C;   D;   E;   F;   G;   H;   I;   J;   K;   L;   M;   N;   O;   P;
119; 117; 115; 116; 112; 121; 115; 122; 116; 118; 109; 112; 119; 112; 117; 113;
118; 115; 115; 122; 118; 121; 120; 122; 120; 113; 120; 123; 121; 121; 109; 117;

この結果から、昨年 1 月と今年 1 月の積雪量の平均値は同じだと言えるか?


仮説検定のページの流れに従い、仮説を設定する。帰無仮説は等式で表せるものにするのが基本であるので、「同じ」である方が帰無仮説になる。文章で素直に表すと

帰無仮説: 積雪量の平均値は同じである。
対立仮説: 積雪量の平均値は同じでない。

となるが、ここは一工夫して以下のように差をとって表すことにする。

H0: μ1 - μ2 = 0
H1: μ1 - μ2 ≠ 0

ここで、H0 は帰無仮説、H1 は対立仮説、μ1 は昨年 1 月の積雪量の平均値、μ2 は今年 1 月の積雪量の平均値である。

次は検定統計量を求めるステップであるが、その前に、観測点ごとにデータの差をとることにする。

A;   B;   C;   D;   E;   F;   G;   H;   I;   J;   K;   L;   M;   N;   O;   P;
119; 117; 115; 116; 112; 121; 115; 122; 116; 118; 109; 112; 119; 112; 117; 113;
118; 115; 115; 122; 118; 121; 120; 122; 120; 113; 120; 123; 121; 121; 109; 117;
1;   2;   0;   -6;  -6;   0;  -5;  0;   -4;  5;   1;   11;  2;   9;   8;   -4;


するとこの検定は、差の値を標本集団として、標本集団の平均値が 0 に等しいと言えるかどうかという問題に置き変えることができる。これは t 検定の原理 - 母平均の検定 と全く同じ問題設定である。

したがって、ここで用いるべき検定統計量は、m を標本平均、μ を母平均、u を標本集団の標準偏差 (不偏分散から算出)、n を標本数として

z value

となる。

あとの手順は 母平均の検定 と全く同じなので省略する。結果的に P = 0.058 となり、帰無仮説は棄却できない。したがって、「積雪量は同じであるとはいえない」という結論になる。

対応のある t 検定は、母平均の検定と同じである というのがこのページの重要な点である。続いて、t 検定 メインページ で対応のない t 検定の考え方を学習する。


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References

  1. MATLAB による仮説検定の基礎. Web pdf.