英語論文の Discussion: 書き方、文例集、注意点など
- 概要: Discussion で書くべきこと
- Discussion の書き出し
- 軽い background から
- 結果を順に
- まず全体を総括
- 論文の significance を述べる
- Limitation のパラグラフ
- 今後の課題を述べる
- Conclusion のパラグラフ
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概要: Discussion で書くべきこと
Discussion の目的は、
- この論文の結果は、過去の知見と照らし合わせてどう解釈されるか
- この論文は、過去の知見に何を加えたのか
- この論文にはどういう問題点 (limitation) があるか
- 今後はどういう点を研究するべきか
などの点について述べる。Introduction との書きわけが難しい部分でもある。Discussion での図の引用は、基本的には避けるべきとされている。
Discussion の書き出し
Discussion の書き出しには、いくつかのパターンがある。
- 軽い background 的なものから始める。
- その論文の内容から始め、結果とマッチするように図 1 から順に解釈などを議論していく。ややクラシックなスタイルのように思える。
- 最初のパラグラフでまず全体を総括してしまい、それから必要なポイントを個別に議論する。論文の significance を強調することが求められる現在、このスタイルが普通という印象。
実例を挙げながら見ていこう。
軽い background から
その論文の結果を広い context の位置付けるために、過去の知見から紹介する方がよいと判断した場合にこのスタイルをとることになる。以下の文章は、いずれも Discussion の書き出しの文章。Introduction の書き出し も参考にどうぞ。
- Based on our previous studies, the small Tim proteins acquire... (Ref 7; Tim と相互作用するタンパクの解析。2nd paragraph が In this study から始まる)
結果とマッチさせた順番に
まず全体を総括
- 最初に全体を総括したあとに各論に入る場合は、Below, we discuss... などのように断り書きを入れる場合もある。
論文の significance
その論文が、どのように科学に貢献したのかを書く部分。よく使われる表現を表にする。hit は Google Scholar でそのフレーズがヒットした件数である。
Understanding |
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insights |
辞書では「洞察、見識」などが訳語として出てくる。単にデータを積み重ねる以上のニュアンスで、into を伴うことが多い。 insight でも insights でも良さそう。一緒に使われる動詞は、例えば offer:
give us というパターンもある。how を使いたい場合は、into how となるのが一般的だ。
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may lead to |
「may は本人も確かでないと思っている場合に使われ、科学論文には使わない」と書いている本を見たことがある。しかし、実際に may lead to という表現を検索すると 4 百万件以上のヒットがある (2017 年 8 月)。 一つのパターンとして、生物学的な発見が (実際にはかなりギャップがあるものの) 病態や病気の治療に繋がる場合に使われるケースがある。論文の タイトル にも多く使われている。例の 1, 2 はタイトルである。
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promise |
将来の希望を述べるときに promise は便利な言葉である。
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substantiate |
「実証する」の意味。自分たちのデータは既にわかっていたことの延長線であるが、かっこよく表現したい場合などに使える。
未来形として使えば、今後の展望にもなる。しかしこの表現は使用例がちょっと少ない気がする。
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exemplify |
「例示する」。上記の substantiate に似た使い方ができる。広く受け入れられている事象に対する例外を示す論文で、実はその例外がけっこうあるというニュアンス。
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Limitation のパラグラフ
分野によると思うのだが、Discussion で通常 1 パラグラフを使って論文の limitation を述べる場合がある。とりあえず、書き方の instruction ページを 3 つ。
- What are the limitations of the study and how to write them? editage
- How to present study limitations and alternatives. Link.
- Writing Point: How to Write About Your Study Limitations Without Limiting Your Impact. Link.
典型的には、以下の表に示すような点が limitation としてよく言及される。
Limitation | 表現 |
---|---|
Sample size |
サンプルサイズは、生物学に常につきまとう問題である。ヒトを対象とした研究で、サンプル数がどうしても限られてしまう場合。
|
自己申告 | 患者への聞き取り調査などの場合。
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Limitation のパラグラフであることを示す表現には、以下のようなものがある。なお、limitation という単語は質量名詞 mass noun にもなるが、論文では可算名詞 countable noun とするのが普通のようである。したがって、A limitation of this study... という表現になる。
A limitation for this study is that we did not obtain neuropsyhological measures and thus we cannot assess if the activity in prefrontal regions is associated with behavioral measures ... (3).There are some limitations of this study. Firstly, .... (4).
Limitation という単語を使わない表現もあるが、少しわかりにくくなるかもしれない。この場合、むしろ次に示す項目である「今後の課題」に近くなるだろう。
- Though the findings detailed above do seem robust,
a number of points require further clarification (1).
今後の課題
Reviewer が追加実験に言及した指摘した場合、それを「今後の課題」として Discussion で言及し、追加実験をせずに済ませることはよくある。
Reviewer への返事には、以下のような文章が使われる。
- We would like to follow up our study according to the reviewer's suggestion in the next paper to clarify...
- ... is beyond the scope of this study...
Reviewer に指摘された点については、単に返事をするだけではなく、関連する内容を本文にも追加するのが一般的である。これには以下のような表現がある。
Further studies |
|
Conclusion のパラグラフ
Discussion の最後に conclusion のパラグラフが来る場合と、Conclusion というセクションが別にある場合がある。どちらにするべきか指定している雑誌もあるのかもしれないが、著者に任せている雑誌が多いように思う。
このパラグラフの書き出しはシンプル。
- In conclusion, ...
- In sum, ...
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References
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Volkow et al. 2008a. Low dopamine striatal D2 receptors are associated with prefrontal metabolism in obese subjects: possible contributing factors. NeuroImage 42, 1537-1543.Kumar et al. 2014a. Demyelinatind evidences in CMS rat model of depression: a DTI study at 7 T. Neuroscience 275, 12-21.Paracchini et al. 2005a. Genetics of leptin and obesity: a HuGE review. Am J Epodeminol 162, 101-114.Ye et al. 2016a. Genome editing using CRISPR-Cas9 to create the HPFH genotype in HSPCs: An approach for treating sickle cell disease and β-thalassemia. PNAS 113, 10661-10665.Neal et al. 2015a. Mia40 protein serves as an electron sink in the Mia40-Erv1 import pathway. JBC 290, 20804-20814.
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