英語論文: オーサーシップについて

UB3/english/paper/authorship

このページの最終更新日: 2024/09/30

  1. 概要: 論文の著者
  2. 著者の要件と Author contribution
  3. 著者数の変遷
  4. ギフトオーサーシップ

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概要: 科学論文の著者

研究の成果は原著論文 original paper として著者の名前とともに発表される。単著が普通の分野、アルファベット順に著者を並べる分野など、研究領域によって様々な違いがあるようだが、このページでは、生物学分野の論文についての記述が中心になる。

論文の著者のなかで、とくに重要なのは first author, corresponding author, last author である。

第一著者
First author

著者リストの最初に名前が来る人。その論文の研究をメインで行い、論文を書いた人がなるのが普通である。最近では equally contributed と言って複数の人が第一著者になる例も増えてきている。

第二著者
Second author

2 番目に名前が来る人。第一著者の次に貢献度が高いとみなされる。実験を教えた先輩、指導にあたった若手教員などがなることが多い。

連絡著者
Corresponding author

その研究に対して、責任者として連絡を受ける立場の人。責任著者とも。投稿に関する一連の手続き、共著者への連絡なども corresponding author の仕事である。

ラストオーサー
Last author

シニアオーサーとも呼ばれる。著者リストの最後に名前が乗る人。普通は研究室のボスがなる。Corresponding author と重複する場合も多いが、講座内で若手の研究者が主体的に研究を行った場合などには、そちらが corresponding author になる場合もある。


著者の要件と Author contribution

自分が著者になっている論文の数は研究者としての評価に直結するために、「誰を著者に含めるべきか」は常に問題となる。

論文に対して、直接的かつ科学的な貢献をした人 が著者になるのが原則である。米国科学アカデミーの基準では、以下のような貢献をしただけの人は著者になるには不十分で、謝辞 Acknowledgments に名前を記載すべきとしている (2)。

  1. Gathering funds for the project: 研究費をとってきた
  2. Paying salaries: (その研究費から) 給与を支払った
  3. Providing a conducive environment: 研究環境の提供
  4. Being the spokesperson: 外部向けの代表者という感じか?
  5. Providing published reagents or procedures: 既に既知の試薬や方法を提供

著者としてふさわしい要件の例は以下の通り (2)。

  • Designed research
  • Performed research
  • Contributed new reagents or analytic tools
  • Analyzed data
  • Wrote the paper

これはシンプルだが深くて良い条件だと思う。まず designed research だが、これはちょっとしたアイディアを出しただけでは著者としては不十分で、研究をデザインするレベルの貢献でないとダメということだ。

Contributed new reagents or analytic tools はには "new" が入っている。つまり、お金を出せば手に入る既存の試薬、つまり研究環境などの提供ではダメ。

Wrote the paper が入っているのも興味深い。「論文書いただけ」という批判をネットで見ることがあるが、writing は研究の重要なステップであり、これは立派に著者の条件になっているわけである。

著者の貢献を明らかにするための試みとして、Author contribution を明記する論文が増えてきている。

中には面白いものもある (参考: 論文の笑える表現集)。

  • S.M. had an idea and then sat in his office; F.R., A.K.G., C.R.-F., and A.G. did all the work; A.K.G. and S.M. wrote the paper.

CRediT スタイル

CRediT は Contributor Roles Taxonomy の略で、最近よく見るようになった author contribution のスタイルだ (参考ページ)。

参考ページにあるように、著者の役割を conceptualization, methodology などといった決まった単語で表記し、以下のように書く(Elsevier)。

Creditオーサーシップ

従来のものに比べて別に良いとは思わず、さらに上記の Elsevier の公式サイトでさえ、Zhang San の Software のあとにピリオドがなかったり、著者名のあとのコロンが太字になっているものとなっていないものが混じっていたりと、非常にお粗末である。

この質の低さに加えて、研究者は基本的に反 Elsevier であるべきで、Elsevier が白と言ったら黒と言うのが正しい態度である。従わなくて良い場合はなるべく使わないことにしている。

著者数の変遷

一般に、1 報の論文あたり著者の数は 増加する傾向にある (医学分野: 1I)。理由としてよく言及されるのは、研究手法の複雑化に伴って多くの人が関わった論文が増えてきていること、また不適切な gift authorship が増加していることである (1I)。

> 放射線医学の論文 (1991-2012) に関する調査 (1)。

  • 142,576 の論文を調査。平均の著者数は 3.9 から 5.7 に直線的に増加。
  • Clinical trial は直線的に、review は指数的に、case report は logistic に増加している。
  • 論文あたりの著者数が多いのは、日本、イタリア、ドイツである。

ギフトオーサーシップ

上記のような貢献をしていない人が著者に含まれることをギフトオーサーシップ gift authorship といい、典型的な研究不正の一つである。

もっとも若手研究者の不満を集めているのは、おそらく「何もしていない教授が著者に収まる」という 1 のケースだろう。ただし、普通の場合「研究費をとってくる」ためにはそれなりの研究計画を提示することが必要であり、あなたが気づかないところで、ボスは 研究の方向性を決めるという大きな貢献をしている可能性もある。

ボスは研究の根幹を manage していると理解させるだけの実力を (態度でなく実力で) 示すこと、若手は自分の研究が行われた背景についてよく考えることができれば、このような conflict に至らずに済むことだろう。


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References

  1. Chow et al. 2015. Increased rates of authorship in radiology publications: a bibliometric analysis of 142,576 articles published worldwide by radiologists between 1991 and 2012. AJR2015, 204, W52-W57.
  2. Cozzarelli 2004a. Responsible authorship of papers in PNAS. PNAS, 101, 10495.
  3. ポスドクが Corresponding Author を目指すことについて。Link.
  4. 論文の著者順. 若手研究者の生活日記. Link.

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