英語論文: 科学論文とは

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このページの最終更新日: 2024/09/30

  1. 概要: 科学論文とは
  2. 科学論文の種類
    • 学会発表系
    • 原著論文系
    • 総説系
  3. 原著論文の基本的な構成
  4. 総説 Review article について

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概要: 科学論文とは

研究成果を世に発表することは、科学者の重要な仕事の一つである (とされている)。成果を発表する方法は数多くあり、その分類もはっきりしていない場合が多い。このページでは、研究成果の発表方法について概説する。主に生物学・医学分野の話である。

発表形態を総称して、とりあえず「科学論文」と読んでいるが、これはあまり一般的な用語ではない。


査読 peer review は、科学論文を特徴づける重要なステップである。査読の有無は発表される成果の質を保証するとされている。

「とされている」とつけているのは、研究発表や査読が本来の機能を失いつつある現状があるためである。以上の手順は、インターネットがない時代に確立されたものであり、現在は科学雑誌を介さなくても研究内容を発表することが可能になっている。私は、従来の形式では編集者と査読者の権限が大きすぎると感じている。

さらに、研究分野の細分化によって質の高い査読が難しくなっているという現状がある。このような状況のもと、査読は必要最低限にし、科学的に妥当な内容の論文ならば新規性やインパクトを問わずに論文を公開しようという流れがある。論文のインパクトは、その後論文が他の研究者にどのように評価されるかに任せるという態度である。

査読の項目や ブログ にときどき関係する話題を書いている。

科学論文の種類

学会発表系

学会発表

口頭、ポスターなどの手段で、研究の成果を伝える。査読がある場合とない場合の両方がある。

学会の抄録
Proceedings

本来は学会発表の内容をまとめたものだが、PNAS などのように原著論文との区別は曖昧である。これにも、査読のあるものとないものがある。

物理や数学の分野では、原著論文でなく抄録が発表の主体という話も聞く。


原著論文系

原著論文
Original paper

単に「論文」という場合、これを指すことが多い。基本的に査読がある peer-reviewed paper である。

科学雑誌に投稿し、査読による審査を経て掲載が決定される。これまでに知られていない「新しい知見」を報告するものである。

症例報告
Case report

医学分野で、実際の症例に関する病状、診断、治療などを報告するもの。n = 1 の場合もある。新しい知見という意味では原著論文に近いが、区別されることが多い。

近年では症例報告に特化したジャーナルも増えているようだ (参考)。

臨床試験、治験
Clinical trial

患者のフローチャートは Method なのか Result なのか迷ったが、Boulware et al. NEJM 2020;383:517-25 では Results の最初に書いている。


総説系

総説
Review

新しい知見ではなく、既存の文献をもとに著者の意見をまとめたもの を一般に「総説」という。その分野の有名な人が依頼されて書くことが多い。通常は査読がある。原著論文で報告された事実が、教科書へまとめられていく途中の過程とも言える。下記の systematic review に対して narrasive review と呼ばれることもある。

このほか、一定のルールに基づいて既存の文献を再解析したもの も review と呼ばれる。この場合は Systematic review や Meta analysis と表現されることも多い。

書籍
Book

自然科学領域では、基本的には査読がないため、あまり評価されないという風潮もあるが、普通はある程度の地位がないと本の出版には至らないので、また違う観点からの評価になるだろう。

社会科学では重要な手段の一つになっているようだ。

原著論文の基本的な構成

原著論文 original paper は、「これまでに知られていなかった新しい知識」を提供するための手段である。

  1. 新しい事実を発見したら、それを原著論文という形式にまとめる。英語が一般的であるが、日本語やその他の言語の原著論文も存在する。
  2. 原著論文を科学雑誌に投稿する。
  3. 科学雑誌の編集者は、その論文の分野に詳しい他の研究者に 査読 を依頼する。研究の妥当性、新規性、インパクト、論文の書き方などが評価される。
  4. 査読者および編集者が、その論文は十分に質が高いと判断した場合、論文が雑誌に掲載される。現在では、ほとんどの雑誌がオンラインで読めるようになっている。

これまでの歴史によって基本的な形式が定められており、以下のようなセクションを含めるのが一般的である。

  • Introduction または Background
  • Materials and Methods
  • Results
  • Discussion
  • Conclusion
  • References

もちろん図の数や大きさによるが、私の場合は Word で 400 行の原稿が、2 段組の一般的な論文形式にしたときに 7 – 8 ページになることが多い。

総説 Review article について

上で述べたように、review article には、まず一定の criteria に基づいて文献を再解析した systematic review がある。これは例えば以下のような分析である。

  • *** というキーワードでデータベースを検索し、ヒットした 20,243 件の論文のうち、対象とする患者数が 1,000 人以上の論文 87 報のデータを集めて再解析した。
  • *** および PET というキーワードでヒットした 78 件の論文から PET 画像を集め再解析した。

これに対して、著者の考えに基づいて文献を集めたいわゆる「レビュー」は non-systematic review または narrative review と呼ばれる。Narrative review はその分野の傾向を知るために有用であるが、著者の意見というバイアスがかかっている。

また原著論文やグラントを査読することも review と言われ、査読者は reviewer または referee と呼ばれる。つまり review という言葉は複数の意味で使われている。

Systematic review および narrative review に関するメモをここに記載しておく。

  • 知り合いの偉い教授は、Pubmed で見ると 150 報ぐらい論文があって、うち 15 報ほどが総説。業績として、原著論文と総説の割合はどれぐらいが妥当なのか、引き続き調べてみたい。
  • メジャーなオープンアクセス誌 PLoS ONE は、いわゆる「レビュー」を受け付けていない。
  • PeerJ は systematic review は受け付けるが、そうでないレビューは受け付けていない。こういうジャーナルは結構多い。
  • Narative review は editor からの招待があったときのみに受け付けるというジャーナルが多い。その分野の素人が文献をまとめてレビューを書くのを嫌うということなのだろう。「招待」には invited または solicited という単語が使われる。

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References

  1. 若手研究者のためのシステマティックレビューの書き方指南. Link: Last access 2020/1/20.

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