英語論文における参考文献: 目的と引用の仕方
- 概要: 参考文献が必要な理由
- 根拠を提示することの重要性、なぜ Wikipedia を参考文献にしてはいけないのか
- 根拠を提示しなくても良い場合
- 文章中での引用の仕方
- スタイルの問題
- Introduction での引用
- Materials & Methods での引用
- Results での引用
- Discussion での引用
- 参考文献リストの作り方 (別ページ)
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概要: 参考文献が必要な理由
簡潔にまとめると、論文に参考文献が必要な理由は以下の通りである。
- 過去の関連研究に関して適切な情報を与えることで、読者が論文の価値を判断することが可能になる。
- 全ての情報は論文に書ききれないので、すでに確立された実験方法などを適切に引用することで紙面を節約する。
逆に言えば、論文に含める参考文献は、その論文の内容・価値を判断するために引用されるものである。つまり、情報をまとめることを目的とした総説 (literature review) とは異なるというのも重要なポイントである。
論文を書く際に参考文献を効率的に管理したいなら、Mendeley など無料の選択肢もあるが、EndNote がベストである。個人的には、データベースソフトを ファイルメーカー から LibreOffice に変更してから、EndNote は自腹で使い続けている唯一の有料ソフト。
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根拠を提示することの重要性
論文を書く際には、原則として
「この研究ではショウジョウバエを用いた」と書く場合を例として考えてみよう。生物種を記載する場合には、学名ならば原則として種は一意的に定まる。"We used Drosophila melanogaster" と書けば、読者が種を間違えることはない (系統 strain はまた別の問題)。
一般名 common name の場合、表記ゆれの問題が生じる。ショウジョウバエ Drosophila melanogaster は fruit fly であるが、fruitfly と一語で表している論文も多数存在する。どちらを選べばよいのか?
考え方の手順は、次の通り。
- まず根拠を探す。fruitfly でなく fruit fly と書きたいなら、そのように表記してある論文、辞書などが根拠になる。
最悪なのは、自分の知識の範囲内で「なんとなく」書き方を決めること。
- 次に、その根拠が妥当であるかを検討する。
- 「fruit fly と書いてある論文が 1 個ありました! これに基づいています!」 では根拠として弱い。
- 「fruit fly と書いてある論文が 100 個あります!」なら多少まし。ただし、全部同じグループからの論文だったりしたら、強い根拠とは言い難い。「強い」とは「それが業界のコンセンサスになっている」ということである。
- 「Drosophila を使っている論文を 100 個みたら、95 個が fruit fly でした!」ならもっと良い。
- 論文以外にも、辞書や公的機関のウェブサイトは強い根拠になる。
- 生物の common name ならば、PubMed Taxonomy が強い根拠になるだろう。
- 日本語なら 岩波 理化学辞典 (Amazon)、英語なら Oxford Dictionary of Biology が権威のある辞書であり、良い根拠になる。
以上は単なる例であるが、例えば A という実験をしたあとに実験 B に続くのは妥当か、C というデータに対して D という統計手法を適用するのは妥当かなど、全て根拠 (前例) をもとに判断するのが基本である。前例のない方法は、何かの問題を含んでいる可能性が高いということだ。
この態度は、決してオリジナリティを軽視しているわけではない。過去には数百万ではきかない数の論文が出版されており、想像を絶する数の人が研究を行ってきたわけである。前例のない手法、表現が生み出される余地は小さい。どの分野にも通用することであると思うが、基本を踏襲せずに思うがままに活動して成功を納めることは不可能とは言わないが、あなたが稀代の天才でない限り難しい。
根拠を提示しなくても良い場合
一般に、その情報が業界における「常識」の場合は、根拠の提示は不要である。つまり参考文献も不要。生物学分野の例としては、以下のようなものがある。
- DNA が二本鎖であること
- 生物は自然選択によって進化すること
- タンパク質は主としてアミノ酸からできていること
これは「常識」なので、明文化されたルールがあるわけではない。その分野の論文をたくさん読んで、何が常識であるかを判断できるようになることが唯一の方法である。
文章中での引用の仕方
スタイルの問題
大きく分けると、(Suzuki et al., 2013) のように名前を示して引用する場合と、(1) のように数字だけで引用するスタイルがある。これは EndNote などが自動でやってくれるので、それに任せておけば良いだろう。雑誌によるスタイルの違いにのみ注意する。
Introduction での引用
Introduction は、過去の研究を参考にしながら、その論文で行う研究を正当化するためのセクションであり、引用が最も必要な部分である。
ただし、原則的に
- Izumida et al. (2013) Nat Commn では、Introduction での文献引用が 1 つだけである。飢餓による脂肪の動員というよく知られた話題を扱っているので違和感は低いが、それにしても少ない。
Results での引用
伝統的には、Results は結果をシンプルに書くセクションであり、この場合には文献を引用する余地はほとんどない。しかし、論文のスタイルも変化してきており、現在では Results での引用も一般的になってきた。詳細は Results の書き方 にまとめたので、そちらを参照のこと。
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References
- うさぎ文学日記. Link.
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