査読の概要と目次
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査読に関する上位のページです
- 概要: 査読とは
- 査読のメリットとデメリット
- より良いシステムの構築に向けて
- 査読をオープンにする
- 掲載後評価
- 査読の歴史
査読関連ページ
一部、内容は重複しています。暇なときに以下のページを適当に眺めてもらい、実際にコメントを書くときに「コメントの書き方」ページを参照してもらうのが良いと思います。
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査読とは
このページでは、主に 原著論文 の査読に関して述べる。主に医学・生物学関係の査読の状況である。
科学上の「発見」は、以下のような「査読システム」を経て検証されるような仕組みが出来上がっている。
- 発見者は、主張したいことを原著論文という形式にまとめ、雑誌に投稿する。
- 雑誌の編集者 editor は、原著論文の内容が妥当であるかどうかを検討するために、近い分野の科学者に査読を依頼する。
- 査読者 reviewer or referee は論文の内容に関するコメントを編集者に届ける。
- 編集者は、そのコメントをもとに原著論文が雑誌に掲載される価値があるかどうかを判断する。通常は、論文に対して何らかの修正を求めることになる。
- 編集者が受理 accept すると判断した論文は、校正などを経て出版 publish される。
一般に、査読のない科学的出版物 (大学や研究機関が発行する紀要、研究者のホームページに記載された内容など) に比べて、査読付き論文 は一定のクオリティチェックを受けているために
査読のメリットとデメリット
査読システムには、以下のようなメリット、デメリットが指摘されている。このサイトの管理人は、基本的に「査読嫌い派」であり、ネット時代に応じた新しいシステムを構築している必要があると考えている。
メリット
査読付きの論文として出版されているということは、著者のほかに複数の人間が「この論文の内容は妥当である」と判断したことを意味する。著者の独りよがりでないことの証明になる。
査読された論文が perfect! という評価を受けてそのまま出版されることはほとんどなく、通常は査読者のコメントに応じた内容の変更が求められる。この過程を経ることで、論文の中身も改善されることが期待される。
デメリット
査読にかかる時間は、しばしば科学者を絶望させるほどに長く、数年にわたる場合もある。その結果、「数年の間に論文は確かに改善されたが、major conclusion はとくに変わらない」ということが起こり (4)、卒業、研究費の取得など、様々な点に悪影響がある。
物理や数学などの分野では、論文を仕上げたら簡単な審査のもとに arXiv (アーカイブ) と呼ばれるサイトにプレプリントとして公開することが可能である。医学・生物学においても bioRXiv という同様のシステムが作られたのは喜ぶべきことである。
多くの場合、編集者および査読者は大学などに所属する研究者であり、
論文を購入する費用は年々上がっており、とくに大学の経費を圧迫している。以下のような解決策が考えられている。
- オープンアクセス: 著者が掲載料を払い、論文を誰にでも読めるようにする。
- 機関レポジトリ: 大学などのサーバーに論文をアップロードする。
- ボイコット: Elsevier という出版社が槍玉に上がり、2012 年にボイコット運動が起きている。
他人の目が入ると言っても、たかだか数人の意見であり、また実際の判断にはさまざまな思惑が絡むこともあるので、必ずしもいつも客観的で公平な判断が下されるとは言えない。「政治的なゴリ押し」が幅を利かせる状況も生まれている。
PLoS ONE を皮切りに、「内容に科学的な問題がなければ全て掲載」「論文の価値は、掲載後に判断」という理念を謳った雑誌が生まれている。インターネット時代の新しい科学の方法論として期待が集まっている。F1000 もその一つである。
より良い査読システムの構築に向けて
もう少し内容を充実させたい。とりあえず要点のみ。
査読をオープンにする
いくつかの雑誌では、査読過程をオープンにする open peer review システムを採用している。いくつか例を挙げておく。
掲載後評価
査読の時点では、論文として成立する最低限のポイントのみをチェックする。とくに significance に関する点は後世の評価に委ねるという考え方。
被引用数が一つの指標になるが、positive な評価でも negative な評価でも被引用数は増えるという問題がある。また、方法論の論文は引用される回数が多い。どのように掲載後評価の方法を確立するかはまた別の問題。科学者に、積極的な掲載後評価を行うモチベーションを与える方法も重要。
査読の歴史
査読は科学に必須の方法論だと考える人もいるかもしれないが、実はそうではない (5)。「世界で特に権威ある学術雑誌といえるネイチャーでさえ、1973年以前は体系的な外部の査読を採用していなかった」そうである。
大きな流れとしては、以下のような感じ。
- かつては研究者人口が少なく、科学誌はある意味同人誌のような存在だった。
- 論文数が増えてきて、インターネットがまだ普及していない時代。発表できるページ数に限界があるので、論文数を絞る必要が生まれた。これが査読を導入する強い動機の一つとなった。
- 現在では、誌面の制限が事実上なくなり、いくらでも論文を出版できる状態になった。
- したがって、出版前に絞るよりも、出版後に科学のクオリティをどう維持するかを考える方が理に適っている。
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References
- 査読で悩む人は必読! 化学ジャーナル編集長が教える「論文査読・12のポイント. Link: Last access 2019/01/17.
- 論文の査読者が意識したい「ネガティブな結果」と「研究の限界」 / 化学誌エディターはこう考える. Link: Last access 2019/01/17.
- 査読コメントへの返答でやっていいこと,ダメなこと. Link: Last access 2019/01/17.
- Does it take too long to publish research? Nature News. Link: Last access 2019/01/17.
- 「査読」のシステムはどのようにして学術の世界に普及していったのか? Link: Last access 2020/03/19.
- 査読の歴史. Link: Last access 2020/03/19.
- メディア王ロバート・マクスウェルが「科学」から巨万の富を搾り取る科学出版システムを作った方法とは? Link: Last access 2022/11/23.
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