R を使った Cox 比例ハザードモデル分析

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このページの最終更新日: 2024/04/25


  1. データセットの説明
  2. 治療の効果を解析
  3. 細胞タイプの効果を解析
  4. 細胞のタイプを調整し、治療の効果を解析

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データセットの説明

R を使った log-rank 検定 で使用した veteran データセットを用いる。これは肺がん治療のデータを示したデータセットで、以下のような項目を含んでいる (2)。本当は 137 行あるが、1 から 10 行目のみ記載する。

Rのveteranデータセット
  • trt: 治療の種類。1 が standard (1-69 行)、2 が test (70-137 行)。
  • celltype: がん細胞の種類。
  • time: 生存時間。
  • status: 1 が打ち切りなし、0 が打ち切り。
  • karno: Karnofsky performance score
  • diagtime: 診断されてから clinical trial までの時間
  • age: 年齢
  • prior: Clinical trial 前の治療の有無。0 が治療なし、10 が治療あり。

まずは生存曲線を作ってみる。trt の有無で 2 群に分けると、以下のようになる。Log-rank 検定では p = 0.9 となり、治療の有意な効果はみられない。


Rのveteranデータセット 生存曲線 Rのveteranデータセット Log-rank検定結果

治療の効果を解析

Treatment の効果を Cox ハザードモデルで解析。coxph 関数を使用。syntax は log-rank 検定に極めてよく似ている。~ のあとの変数指定で factor を使っているのは、おそらくカテゴリー変数としてモデルに入れるため。


結果は以下のようになる。

  • treatment 1 に対して、treatment 2 のハザード比は exp(coef) の部分で、1.018。1 に近く、2 つの治療で効果はほとんど違わないということになる。
  • ハザード比の 95% 信頼区間 は 0.7144 - 1.45 である。

    P 値も計算される。0.92 と非常に大きい。

Rのveteranデータセット cox検定

factor をつけないで coxph(Surv(time, status) ~ trt と実行すると、結果は以下のようになる。値は同じ。もとのデータセットで、treatment はカテゴリーになっているのかもしれない。

Rのveteranデータセット cox検定

最後の cox.zph は、比例ハザード性を確認している。Cox 比例ハザードモデルは、ハザード比が観測期間全体にわたって一定であると仮定している。P が 0.05 よりも小さかった場合には、ハザード比が有意に異なるということなので、交互作用項の導入を検討する (2)。

Rのveteranデータセット cox検定

coxph 関数のアウトプット

coef がモデルの coefficient, exp(coef) がハザード比 になる。

細胞のタイプの効果を解析

次に、cell type でグループ分けしてみる。4 つのタイプがあり、それぞれで生存パターンに違いがありそうである。


Rのveteranデータセット 生存曲線

同じように、coxph で解析。


どうも、最初の要素 squamous に対する比が表示されるようである。smallcell と adeno で、ハザード比が有意に高いという結果が得られる。

Rのveteranデータセット cox検定
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細胞のタイプを調整し、治療の効果を解析

複数要因を含めるには、回帰分析のように + を用いる。


依然として有意差はないものの、treatment のハザード比が 1.219 (P = 0.315) となっており、調整がない場合の 1.018、P = 0.92 からかなり変化していることがわかる。

Rのveteranデータセット cox検定
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References

  1. 佐藤弘樹、市川度. 2013.

生存時間解析 について平易に書いた数少ない解説書。

統計のなかでも、生存時間解析はそれだけで 1 冊の本になるほど複雑なわりに、ANOVAや t 検定などと違い使用頻度が低いため、とっつきにくい検定である。

この本では、とくに Kalpan-Meier 生存曲線、Log-rank 検定、Cox 比例ハザードモデルを重点的に解説しているが、prospective study と retrospective study, 選択バイアス、プラセボなど、臨床統計実験で重要な概念についても詳しい説明がある。基礎生物学の実験ではあまり意識しない重要な点であるので押さえておきたい。



  1. R で生存時間分析を行う. Link: Last access 2018/09/20.
  2. Veterans' Administration Lung Cancer study. Link: Last access 2021/07/05.

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