R による LogFC (fold change) の計算

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このページの最終更新日: 2024/09/30

  1. 概要: LogFC とは
  2. 2 群で LogFC を計算する
  3. LogFC の計算でゼロを避ける方法

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概要: LogFC とは

RNAseq、プロテオミクス、メタボロミクスなどの大規模解析では、しばしば fold change という値が用いられる。一般には、サンプル A における mRNA などの量をコントロールで割った値であり、fold change = 2 ならば「2 倍になった」、fold change = 5 なら「5 倍になった」という意味になる。

この fold change を対数で表した LogFC もよく用いられる。このページでは、R を使った LogFC の計算方法についてまとめる。

「常用対数 log と自然対数 ln の違い」に、対数に関する基本事項をまとめてあります。以下のサイト内検索からどうぞ。

2 群で LogFC を計算する

組み込みデータセット swiss を使った例を載せておく。

swiss は、以下の図 (一部のみ表示) のようなデータセットである。スイスの各地域の出生率、Education などがまとめられている。

Rの組み込みデータセット swiss

ここでは、出生率 fertility を、80 以上なら 1、80 未満なら 0 とし、0 または 1 で Agriculture, Examination, Education, Catholic, Infant.Mortality の LogFC を比較する。

具体的な手順は以下の通り。

1. Fertility を 0/1 データに変換

data = swiss #まずはswissをdataに格納
data$Fertility[data$Fertility < 80] = 0
data$Fertility[data$Fertility >= 80] = 1

これで Fertility が 0 と 1 に変換される。

Rの組み込みデータセット swiss

2. 変換した 0 と 1 でグルーピングする

Fertility が 0 の群と 1 の群に分ける。Excel などで並べ替えても良いのだが、dplyr に group_by という便利な関数があるので、これを使ってみる。

group_by(data, Fertility)

これで、data を Fertility の 0/1 によって 2 つの群にわけることができる。この関数の詳細は、このページ などを参照。

このあとに data の内容を表示しても表示してもソートされているわけではないが、グループ分けはされている。確認するためには、summarise_all 関数などで計算してみるとよい。

A = group_by(data, Fertility)
B = summarise_all(A, funs(mean(., na.rm=TRUE)))

全てのグループについて、mean 関数で平均値を計算している。na.rm = TRUE は欠損値を無視するオプション。すると、このように 0 と 1 ごとに平均値が計算される。

Rの組み込みデータセット swiss

3. 整然データに変換し、LogFC を計算

これらの値の比をとれば fold change であり、その対数をとれば良いのだが、この形は 整然データ ではないので少し気持ちが悪い。t 関数を使って整然データにし、Fold change を計算する。

ただし、t 関数で変換するとデータフレームではなくなってしまうため、as.data.frame 関数で D に戻す。D はこのようなデータフレームになる。

C = t(B)
D = as.data.frame(C)

Rの組み込みデータセット swiss

新たな列 V3 を cbind 関数で追加する。as.data.frame を使わないと上手くいかないのは、ここも同じである。

E = as.data.frame(D$V1/D$V2)
F = cbind(D, E)

最後に V3 を Log にする。これで一応完成。

G = as.data.frame(log10(F$`D$V1/D$V2`))
H = cbind(F, G)

Rの組み込みデータセット swiss

しかし、この方法では Fertility の行が -Inf になってしまう。ゼロの対数をとっているためである。そもそも、この行は 0 または 1 の条件の行なので、平均値などを計算することに意味はない。データフレームから特定の行を抽出する に従って、2 - 6 行目だけ抽出すれば十分なはず。

I = H[2:6]

以上で、これで複数の値に対して一括で LogFC を計算できたことになる。今回は各ステップを見るためにいちいち変数に格納したが、慣れてきたら一気にパイプ %>% で繋いでしまって大丈夫だろう。

LogFC の計算でゼロを避ける方法

Fold change および LogFC の計算方法は、ゼロがない場合にのみ通用する方法である。

最後の段階で、V1 の値にゼロがあれば、Fertility の行のように Log100 を 計算しなければならなくなる。10 を n 乗してゼロになる数は計算できないので、LogFC ではこれを避ける必要がある。

V2 の値にゼロがあれば、V1/V2 の部分でゼロで割ることになってしまう。Fold change でも LogFC でも問題となる。

これを避けるために、以下のような方法がとられている。

  • RNAseq のリード数をデータとして使うときは、最初に閾値を設定する。RPKM > 5 などの基準を設けて、それよりリード数が少ない遺伝子は除外 (1)。

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References

  1. fold change for genes with 0 reads. Link: Last access 2022/04/28.
  2. 遺伝子発現量などのカウントデータで倍率変化 (fold change)を求めるとき. Link: Last access 2022/04/28.

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